----- 蜷川さんとはどのように知り合ったのですか。

突然事務所に連絡しました。
なにごともクリエイティブな情熱は直接本人に率直に伝えることが大事だと考えます。
上海の外灘エリアでカフェバー&クラブを弊社が開業する予定があること、そしてその内装プロデュースに蜷川さんを起用したい旨を、蜷川さんの事務所に連絡して直接説明に伺いました。もちろん私が直接連絡し説明に行っています。今からの2年半前(2011年の秋頃)の出来事です。
私は蜷川さんの仕事の様子や作品を観察しており、彼女がこういった仕事をやりたいのではないかな、と感じておりました。想像どおり蜷川さんがやりたいと思っていた仕事だったので、本人から「是非やりたい。」という返事がありました。

Shanghai Rose オープニングパーティーにて
蜷川実花氏と大谷社長
仕事などを頼む時は、相手を良く知り、理解することが大事です。そして何事も相手に興味があり、良いと思うことであれば、他の誰かに仲介を頼むことは必要ありません。決定権がある人に興味があれば知らない人の話でも聞くのです。
そして私は興味があるアーティストに関しては常に動向を観察するようにしています。
また、私の所にもいろいろな人が仕事のプレゼンテーションに来ますが、「誰かの紹介なのですが。」という人にはあまり逢う気がしませんが、直接連絡をしてきて話をしに来る人の話は訊きたいと思います。そのような人の方が行動力と思い切りがあるように思えるからです。

----- 外灘に来る人はみんなバーに来ることに限らないのに、なぜバーを作ったのですか。目標している客層も教えて下さい。

もちろんそうです、それほど大きな店ではないので、変わった趣味の人が集まればそれでよいのです。
そして2Fで行われるショーなどは、やはり貴族の遊びなのです。お金と気持ちに余裕がある人のみが来られるのです。
云われるように、バンドに来る人が皆バーに来てしまったら、バーが田舎の人で溢れかえってしまいます(笑)。
ただ、やはりバンドは景色が良いことがいいですね。水(川)が近くにあることもすごくいいことです。昔から動物は水辺に集まり憩う習性があるのです。

Shanghai Rose 内観

----- 上海の衡山路一帯はバーが多いことで有名なのですが、どうして衡山路にしなかったのですか。

4年程かかってこの歴史的建造物の契約に至りました。
それまでに、さまざまなエリアの物件も紹介されましたが、中身は他人に真似されます。建物自体が真似できない物件を探しておりました。
またリスクヘッジの目的で政治的に目立つ物件を探しておりました。
私どもは日本政府関連の金融機関からも資金を調達しています。トラブルが起きるのを防ぐため、逆に目立つ物件の方がトラブルに巻き込まれにくいと考えました。国際的な話題になりますから目立てば悪いことはお互いに出来ません。それが「Shanghai Rose」です。
衡山路でいい物件があればそれでもよかったでしょうね、他と同じでよければ。ただ特別な存在にはなりにくいでしょうね。どこでも人気が出れば同じような内装のものは真似が出来ます。いくら蜷川さんがプロデュースしたからといっても似たような写真は入手できますしね。
しかし、この歴史的物件はオンリーワンの存在ですから、真似はできないでしょうね。
ただ衡山路でも、他の場所でも「Shanghai Rose」のようなオンリーワンの物件を貸してくれるようなことがあれば、お店をやってみたいですね。

----- あなたが考えるエロティックさの作り方を教えて下さい。

「Shanghai Rose」ではライティングに間接照明を多用し、家具は出来るだけ低めに柔らかい素材を使用しています。大きな飾りはダイナミックに配置し、色はとにかく毒々しくグラデーションを多用して、しかし出来るだけプラスチック等の無機的な素材は使わないようにしてあります。より懐古的で豪華なイメージにこだわりました。
言葉にして表現するのはとても難しいのですが、股間にヒステリックな生命力を感じる様な、かつ耽美なイメージも併せ持つ猥雑さを“綺麗に”表現しています。